旧ユーゴスラヴィア諸国の蒸留酒ラキヤ
しかし、これを手に入れるとなると、どうしたら良いだろうか見当もつかなかった。馴染みの酒屋に訊いてみたが勿論不明。ネットで調べていたら、一応、市販品については幾つか買えそうなところは見つけたのだが、各家庭で作られたものなどは、勿論手に入るハズもなく。そう、だからこそ「これはいよいよ乗り込まなければなるまい」と思ったわけだ。
分類としては、ブランデーの一種になるのだろうか。どちらかというと、グラッパと言った方が分かりやすいかもしれない。ウイスキーや、一般的なブランデーやカルヴァドスなどの有名な蒸留酒は、それ専門の業者や生産者が作るのに対して、ラキヤは主に各家庭で作られている。秋に収穫された果物を使って造り、次の1年の家庭の酒になるのだそうだ。それぞれの家庭の味があり、日本で言えば、各家庭にあった漬物がイメージ的には近いのかもしれない。
Youtubeなどでは、ラキヤ造りの動画を見ることもできる。これも家庭によって様々な大きさの蒸留器を使って、煮詰めた果物を熱し、蒸留するようだ。
今回の旅で、クロアチアでは市販品らしきものを、ボスニアでは家庭で作られたものを買うことができた。また、ボスニアのバーで幾つか試したりもした。
飲み方としては、基本的には冷やして呑み、食前酒として供されることが多いようだ。冷やすことから、香りを楽しむというよりは、味を重視しているのだと思われる。味やアルコール度数は、原料の果物やそれこそ作る人によって様々だ。きっと各町ごとに、美味しいラキヤを作れる名人のような人も居るのではないだろうか。
普段ウイスキーを呑んでいる自分の意見では、基本的にはそこまで美味しいものかと言われると首を捻らざるを得ない。とても荒削りな味で、香りと味のバランスが悪いものも多かった。しかし、その背景を知って呑むと、なるほど不思議とこういう味も悪くない、と思えるのだ。生活に根ざした酒、つまり地酒か。そういうのは不思議な魅力がある。
何本か呑んでみたので、テイスティング・ノートを書いてみる。
色:ほぼ透明に近い。軽く黄色がかっている。
香り:草、薬草、青々しい水草のような、消しゴム、むわっとまとわりつく香り
味:若いプラムのような甘さ。フルーティさはそこまでない。やはり草のような青臭さが少し残る。ミドルから少し胡椒のようなスパイシーさ。アルコール度数は40%程度だろうか。
フィニッシュ:草の苦味と、仄かな甘さが続く。段々と甘さとアルコール感による暖かさが残る。
色:ほぼ無色透明
香り:化粧品、香水、藤?などのフローラルさも若干
味:ブドウのピオーネか巨峰のような甘さ、若干洋なしっぽさも。少し人工的にも思える化粧品っぽさが残る。アルコール感が少し抑えられているが、途中からしっかりとした味わいになる。アルコール度数は同じく40%程度だろうか。
フィニッシュ:フルーツの甘さがメインで香る。あまり長くなくスッキリとした余韻。
とても独特な味わいである。表現が難しい。ウイスキー通の人たちがこれをどう表現するのか、少し興味がそそられる。
by whisp
| 2012-05-17 00:51
| 旅